ノグチ・ルーム アーカイヴ

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ノグチ・ルーム アーカイヴ

慶應義塾大学三田キャンパスにある「ノグチ・ルーム」(学内の伝統的名称)は、1951年に建築家谷口吉郎(1904−1979)の設計により第二研究室が建てられた際、その談話室をアメリカ合衆国の彫刻家イサム・ノグチ(1904−1988)が制作したものである。この談話室と小庭園は、明治初年に福澤諭吉が教師と学生の自由な交流を目的として開設した「萬來舎」をふまえて、「新萬來舎」と呼ばれることもある。2003年、新校舎建設のために第二研究室棟が解体され、「ノグチ・ルーム」は2005年3月に竣工した新校舎(南館)のルーフ・テラス部に移設された

慶應義塾大学アート・センターは1998年より「ノグチ・ルーム・アーカイヴ」プロジェクトを立ち上げ、この慶應義塾が有する歴史的文化財を記録し、関連資料を網羅的に収集する研究アーカイヴ活動を展開している。これまでに、専門家に依頼し建物内外の現状写真約60カットを撮影し、デジタル化を完了した。そのうちの何枚かは竣工当時の写真と同一アングルで撮影し、解体以前の状態と竣工当時の状態が比較できるようにした。また本塾工務課に保存されている竣工図面もデジタル化し、図面の名称を確認・整理した。以上は建築学的基礎資料の整備である。またこの他に360度の室内空間全体を撮影記録したデジタル映像などヴァーチャルに空間を体験する資料を制作した。

一方、文献的資料としては、ノグチ・ルーム、谷口吉郎、イサム・ノグチに関する書籍、新聞・雑誌記事を網羅的に収集し研究者向けの書誌データベースを作成している。さらに、重要な作業として、第二研究室およびノグチ・ルームの建設に関わった人々へのインタビュー、証言の取材がある。これについては、少しずつ実現を目指し計画を進捗させている。

「ノグチ・ルーム・アーカイヴ」は、歴史的文化財が変容もしくは消失する状況下でいかに資料を整備し公開していくか、という今日最も中心的な話題に対してひとつの指針を示す実験といえるだろう。

このプロジェクトは、文部科学省の「オープン・リサーチ・センター整備事業」(平成13年度〜平成17年度)による私学助成を得て行われた。