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現代芸術研究会

アート・センターは現代芸術や芸術と社会の関係の諸問題について様々な観点からアプローチしてきた。また、所管するアーカイヴも現代芸術を射程としているものである。本研究会では、現代芸術に関わる諸問題を、美術館学芸員や作家など現場にいる方々と連携しながら、研究・探求していくことを目的としている。また、現代芸術を対象とするアーカイヴの諸問題について研究・検討し、アーカイヴの実践のための基礎研究とすることも目している。

研究会の内容は大きく二つに分けられる。現代芸術そのものの研究と、現代芸術を対象とするアーカイヴの活動についての研究である。研究会では、テクスト購読を踏まえた発表と討論、作家によるアーティスト・トーク、研究発表による問題提起、などを想定している。その中にはアーカイヴ実践にまつわる技術的諸問題や、アーカイヴ実践を通しての問題提起や討論なども含めて考えて行きたい。

第8回例会

展示記録における「作品」とは何か――「第10回日本国際美術展 tokyo biennale 1970」をめぐって

発表者:土屋誠一(つちや せいいち / 美術批評)

 「第10回日本国際美術展 tokyo biennale ’70 人間と物質」は、1970年に美術評論家・中原佑介をコミッショナーとして開催された。この展覧会は、当時の「最先端」とも言えるポスト・ミニマリズム、アルテ・ポーヴェラ、もの派といった美術の諸傾向を切り取ったものである。「人間と物質」展という出来事は、昨今の諸研究によって、ますますその評価を確実なものとしているようである。だが、これら近年の再評価は、その多くが当時の展覧会場で展開された作品の実物を見ることなく行われている。仮設的な性格を持つ各出品作品の構造的必然性ゆえ、作品の「実物」を実見することが不可能である以上、このような性質の展覧会とその出品作品にアプローチするために、当時の展示記録写真や文献といった「二次資料」に頼らざるを得ないことは致し方ない。しかしながら、「実物」が不可避的に欠如の状況に置かれる、このような対象について言及することそれ自体、その欠如ゆえに倒錯的な行為であると言えるかもしれない。  今発表では、「人間と物質」展に出品された作品群の展示記録写真に基づいて、その「二次」的な情報からどのようにして作品を析出し得るのか、そしてさらには、作品が欠如としてある状態において、「作品」の在所はどこに見出し得るのか、これらの点について考察することを目論むものである。ゆえに当発表は、「人間と物質」展についてのみに限定する調査発表を目的とするものではなく、1970年前後の美術作品のある傾向が示すところの特性に基づきつつ、これら傾向の「作品」概念についての考察を目指すものである[土屋]。

日時:2008年 12月 12日(金曜日)18:30–20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第7回例会

「キュビスムとしてのダンス――1910年代のニジンスキー振付作品」

発表者:川野惠子(かわの けいこ / 美術史・舞踊史)

  20世紀初頭ヨーロッパを中心に活動したセルゲイ・ディアギレフ率いるロシア・バレエ団の伝説的な名舞踊手であり、同時に振付家であったヴァスラフ・ニジンスキー(1890〜1950)は、1910年代に《牧神の午後》、《遊戯》、《春の祭典》という三つの作品を発表した。本発表では復元資料が比較的整っている≪牧神の午後≫、《春の祭典》について、台本、音楽、舞台美術など様々な分野を横断し、構成されるこれら舞踊作品の、とりわけその振付に注目し、同時代いよいよその影響力を強めていたキュビスムとのつながりを考察したい。   第一作にあたる《牧神の午後》(1912年)は「キュビスムの身振り」と批評され、上演当時からキュビスムとの関係が指摘されてきた。しかしそうした影響関係は振付の平面性や幾何学性を漠然と述べるにとどまっており十分に検討されてこなかった。そこでキュビスム絵画の絵画史における変革とニジンスキー振付作品の舞踊史における変革の並行関係を明らかにし、ニジンスキーのキュビスム・ダンスとしての試みを示したい。[川野]

日時:2008年 11月 14日(金曜日)18:30–20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第6回例会

セザンヌ、1902–06年:絵画的出来事

発表者:荒川徹(あらかわ・とおる / 二十世紀美術・理論)

 画家ポール・セザンヌ(1839–1906)の絵画は、とりわけ1902年、故郷エクスにアトリエを構えて以来、筆触の爆発的もつれのなかに、あらゆる形象を溶接していく。その分析的で熱狂した試みは、対象の純粋な抽象化などというよりはるかに、自然という推移する出来事の複合体の表現である。サント=ヴィクトワール山の空で暴発する線の軌道のように、一見すれば偶発的に攪乱する筆触群は、あらゆる線や色彩と連接し、大気のように領域を横断し貫く、力の脈打つ流動をつくりだしていく。
 今回は、晩年の1902–06年に制作されたいくつかの風景画と肖像画のみに焦点を当てる。形象と背景、物体と空虚といった異なる系列の激しい交錯のなかで、何と何が結合し、いかなる強度をもたらしているかを、予備的な水彩画と最終的な油彩画の差異を凝視しながら検討していく。とりわけ、人物が風景のなかに磔=張り付けられ、擬態的にたがいの色を変容させる《座る男》(1905–06年)と、最後の風景画といわれている壮絶な《ジュールダンの小屋》(1906年)の2作品を分析し、自然—身体—絵画が筆触のリズムを介して異なるままに連繋する、セザンヌ最晩年の不連続な流動のシステムを考える。[荒川]

日時:2008年 6月 27日(金曜日)18:30–20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第5回例会

スティーヴ・ライヒ《砂漠の音楽》におけるテクスト構成

発表者:篠田大基(しのだ・ひろき / 音楽学)

 ミニマル・ミュージックの代表的作曲家として知られるスティーヴ・ライヒ Steve Reich(1936- )の《砂漠の音楽 The Desert Music》(1984)は、オーケストラを伴う混声合唱による、彼の創作史においては特に大規模な作品である。作品のタイトルは、アメリカの詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ William Carlos Williams(1883-1963)の同名の詩集(1954)からとられており、テクストもこの詩集を中心にして抜粋・構成されている。
 ライヒは、広島と長崎の原爆投下後に書かれたウィリアムズの詩を高く評価しており、核実験が繰り返されるニュー・メキシコの砂漠を思い描いて、この《砂漠の音楽》を作曲したという。
 しかし、ライヒが選んだテクストの中に詩集の表題作「砂漠の音楽」は含まれておらず、また歌詞の中に「砂漠」を示す言葉も、砂漠を描写する音楽表現もない。
 ライヒの発言によると、彼の意図は、音楽ホールという核実験とは無縁の場所で演奏が行われているという事実を聴衆に再確認させることで、作品中に描かれていない砂漠を逆説的に意識させることにあった。本発表は、このようなライヒの狙いがどのように達成されているのかについて、《砂漠の音楽》のテクスト構成の分析と原詩の解釈を通じて明らかにするものである。

日時:2008年 6月6日(金)18:30-20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第4回例会

「ロバート・モリスと制作の現象学」

(Robert Morris and the Phenomenology of Making)

発表者:石岡良治(いしおか・よしはる / 表象文化論)

ミニマルアート以降の美術作家のなかで、ロバート・モリスはドナルド・ジャッドと並び、理論的な宣言を含む批評テクストで知られている。芸術の自律性が問い直された1960年代において、作家自身による執筆活動は、作品の展示や流通を含めた「アートワールド」の状況に対する介入を意味していたように思われる。本発表は、モリスが「制作(making)」を主題にしたテクスト "Some Notes on the Phenomenology of Making: The Search for the Motivated"(1970年)を通して、彼の作品やそれを取り巻く同時代的な状況の読解を試み、その現代的な意義を考察したい。

日時:2007年 2月 1日(金)18:30 - 20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第3回例会
「スクリーン:リチャード・セラの彫刻、作品写真、そして版画」

(Screen: Sculptures, Photographs and Prints of Richard Serra)

発表者:上崎千(うえさき・せん / 批評・芸術学)

「鉄を刷る」展に出品された PasoliniRosa Parks を含む計7点、1987年に制作されたセラの版画作品(screenprints)についての考察。同じタイトルを持つそれぞれの彫刻作品との関係、それらの彫刻の設置状況を撮影した写真との関係を検証しつつ、彫刻家の「スクリーン」に対する問題意識、その関心の諸系列をマッピングする試み。

日時:2007年 11月14日(水)18:30−20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

※港区+慶應義塾大学アート・センター主催の企画展示「鉄を刷る:エドゥアルド・チリダ、リチャード・セラ、若林勇」(11月4日〜17日・東館展示スペース)との連動企画。

第2回例会

『SAC』/『SAC Journal』 −イベント=出来事としての出版物(printed matter)−

発表者:久保仁志(くぼ・ひとし)レジュメ

日時:2007年 9月19日(水) 18:30−20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス

第1回例会

「媒材としての雑誌:コンセプチュアルアートにおける芸術と言葉」

(Magazine as medium: art and language in Conceptual art)

発表者:森下恵美子(もりした・えみこ)

日時:2007年 7月11日(水) 18:30-20:00

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス 105番教室