慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

和田英作《北里柴三郎肖像》修復

本作品は、細菌学者であり本学初代医学部長を務めた北里柴三郎の肖像画で、1933年に慶應義塾に寄贈された。現在、信濃町キャンパスの北⾥記念医学図書館(1937年竣工、和田順顕設計)に飾られている。2023年には、中津市歴史博物館の特別展「福澤諭吉とお札に選ばれた偉人たち」(会期:2023年7月29日~9月18日)に出品されたが、貸出時に作品に破れや亀裂などが確認されたため、展覧会終了後に修復研究所二十一へ修復を依頼した。修復を経て、2024 年 6 ⽉に北⾥記念医学図書館の講堂へ再展⽰を⾏なった。



●作品
作者:和田英作
作品名:北里柴三郎肖像
制作年:不詳
材質・技法:油彩・カンヴァス
寸法:90.5×72.7cm

修復記録
2024 年5月22 日
有限会社 修復研究所二十一
担当 宮崎安章

 

[処置前の状態]
ワニス層:1日処置の際に塗られたもの。塗りムラがあり、黄化が見られる。
絵具層:頭部の上方に2箇所破れがあり、補彩が施されている。右肩の上部や上着の襟に掛けて変色によるシミがある。紺色(上着)に乾燥亀裂が多数ある。
支持体:市販の画用キャンバスである。繊維は亜麻。裏面は、画面側から浸み出したワニスのシミがある。上部中央に2箇所破れており、粘着テープ(ガムテープ)が貼られている。
木枠:員数5本(中桟1本)市販の画用木枠。杉材。楔穴、楔はない。裏面木枠の中桟と下辺の桓に白色の鳥の糞が付着している。
額縁:2重構造の額縁であるがアクリル板などはない。裏蓋はなく、左右辺の上部に鉄板がネジ止めされている。重量は20 kgほどある。

[修復処置事項]
1.写真撮影          
2.調査   
3.絵具層の浮き上がり接着
4.画面洗浄          
5.裏面清掃・殺菌
6.破損箇所のかけはぎ       
7.耳補強布取り付け          
8.張り直し
9.充填整形
10.画面の防徽·殺菌
11.補彩
12.ワニス塗布
13.額縁調整
14.額装

[修復処置内容]
1.修復前、中、後をデジタルカメラで撮影した。
2.修復前の作品の状態を調査した。
3.膠水を浮き上がった箇所に注入し、電気鏝で加温加圧して接着を行った。
4.脱脂綿を巻いて作った綿棒に希アンモニア水をしみ込ませて拭き取り除去した。
5.掃除機を使い裏面の清掃を行った。エタノールで殺菌処置を行った。
6.破損箇所に繊維状にした亜麻を膠水(1:10)で接着した。
7.亜麻布を支持体周囲の耳部にホットメルト型接着剤(BEVA-371)を使い取り付けた。
8.専用の張り器で引き、ステンレス製のスッテップルで画布の耳部を止めて固定した)
9.炭酸カルシウムと強化ワックスを練り合わせた充填剤を詰め、周囲の絵肌に合わせて整形した。
10.チアベンザゾール(T.B.  Z)を主成分とした防黴剤を塗布した
11.溶剤型アクリル樹脂絵具を使って補彩を行った。
12.ダンマル樹脂ワニスを塗布した。
13.画面保護のためUVカットアクリル板とポリカーボネイト板(裏蓋)を入れるため裏側に泥足を取り付けた。
14.ステンレス製のT字金具で作品を固定した。




図1 修復前 表


図2 修復前 裏


図3 修復中 浮き上がり接着


図4 修復後 表


図5 修復後 裏


What's on