慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

塾監局屋上鐘の修復

 放送チャイム以前に始業を告げた塾監局屋上に設置されていた鐘について問い合わせがあり、管財部が調査したところ塾監局の階段屋上踊り場に撤去したまま置かれていることが判明した。慶應義塾の歴史的な資料として意義があることから、修復保存処置を行うこととして、2011年2月に搬出、ブロンズスタジオに基礎調査を依頼した。その結果、今後の展示や再設置の可能性についての見解を得て、保存修復処置を進める必要があるとの提案を受け、美術品運営委員会で検討した結果、相当の重量をもつ鐘を展示にしろ、吊った形で設置することは現在では考え難いことから、鐘本体とモーターをそれぞれ個別の形で修復保存することとした。また、今後も学内では鐘を吊って音を確かめる作業を行うことが事実上不可能と予想されるため、この機会に鐘の音の収録も併せて依頼した。
〔文献〕『三田評論』1964年9月号



保存修復作業記録

2012年4月23日 ブロンズスタジオ・高橋裕二

作品

鐘    材質=ブロンズ
     寸法=63×47×47 cm
打鐘装置 材質=真鍮、鉄、銅 他
     寸法=84×58×30 cm

【洗浄・保存処置】

「鐘」の洗浄・保存処置
1. 外側  洗浄・付着物除去
      鉄錆の付着を除去        
工業用研磨剤入り不織布・非イオン系洗浄剤 水洗い
        真鍮ブラシ・スパチューラ等による付着物除去
2. 外側  ワックス塗布        
        ミツロウ(リグロイン希釈)塗布
        バーナーによるワックスの含浸
        ミツロウ(リグロイン希釈)再塗布
        ブラッシング
3. 内側  洗浄・付着物除去
        非イオン系洗浄剤 水洗い
        スパチューラ等による付着物除去
        ミツロウ(リグロイン希釈)塗布
        ブラッシング
4. 外側  ワックス再塗布
        ミツロウ(リグロイン希釈)再塗布
ブラッシング

「打鐘装置」クリーニング・点検
1. 現状点検
2. モーター取り外し・型式プレートの確認
  モーター 米国 エレクトロ・マシーンズ社製 ウィスコンシン州、シダーバーグ
       ELECTRO MACHINES INC CEDARBURG WIS.
3. クリーニング作業
        ワイヤーブラッシング(スチールブラシ・真鍮ブラシ)
        マシン油の拭き込み
ニードル、綿棒での細部の汚れ取り。

【その他】

1. 「鐘」の音の録音 (CDに保存)
2. 鐘の重量測定  75.95 kg
3. 木箱梱包 鐘/打鐘装置を同梱にした。

写真は左から
写真1:塾監局の鐘(『三田評論』1964年9月号)
写真2:鐘の洗浄
写真3:修復後収納された状態

日付

2012年3月1日〜4年19月