慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

世界地図カップのオブジェ

 日吉にある慶應義塾高等学校(旧第二校舎、曾禰中條建築事務所、1936 年)の外壁改修工事に際し、北西角の外壁沿いに存在するトロフィーのようなオブジェに破損が確認された。蓋のような部分が破損して鉄筋が露出していたため、日吉の施設担当者から通常の整形・補修と塗装作業を実施してよいかという照会を受けた。そこで、アート・センターを通じて専門家に依頼し調査を行った。

 



観察記録
*調査・作業期日 2022 年3 月2 日
●作業前の状態
*表面の状態
陸地と海洋で塗り分けられた2 色の塗料のいずれにも複数の塗膜層が観察される。塗料の劣化が進行しており、最上層の塗料は膜厚が多く激しい剥離・剥落が生じている。カップ状本体の下方は塗料が喪失され、モルタルの素地が露出していた。

*鳥の排泄物 なし。
*人為的キズ・落書きの個所
海洋部中央の上層塗膜喪失個所にマジックインキによる落書きがある。
* ピンホール(鬆)・穴・亀裂の個所
 顕著なものは認められない。
*破損・欠失個所
蓋が破損して補修されている。この個所を後側にして蓋がのせられており、カップ状の本体との目地が合致せず、隙間が生じていた。
*その他 カップの内部に枯れ葉や塵埃が堆積していた。
* 変形個所 蓋の補修個所は元の輪郭が損なわれている。
*固定状態 良好。

●作業の基本方針
洗浄は塗膜を大きく損なうと判断される。カップ内部の清掃に留める。蓋の位置を復元する。

●作業内容
1.調査および接合個所の目地に合致した蓋の位置復元
2.カップ内部の清掃

●保存上の留意事項
塗料の劣化が著しく進行しているが、モルタル本体の脆化は進行していないと推定される。再塗装は旧い塗膜を除去して施す。


写真は左から
図1 《世界地図カップのオブジェ》塗料の状態 接写
図2 作業後

日付

2022年3月2日


What's on