慶應義塾大学アート・センター　Keio University Art Center

山名常人《福澤諭吉胸像》湘南藤沢キャンパス屋外彫刻洗浄保存処置

本学では2001 年度より三田キャンパスの屋外彫刻洗浄保存を専門家に依頼して実施し、その後各キャンパスと一貫教育校に設置されている屋外彫刻についても処置を進めてきた。現在では二年に一度の頻度で洗浄および保存処置を行っている。本年度は三田キャンパス5点、日吉キャンパス4点、 矢上キャンパス1点、湘南藤沢キャンパス1点、普通部1点、 中等部3点、志木高等学校2点、幼稚舎2点、湘南藤沢中等 部・高等部1 点の計20 点の洗浄保存処置を行った。二年前に処置を実施した作品に加え、本年度は日吉下田グラウンドにある《日本ラグビー発祥の地記念碑》石柱の洗浄およびブロンズ像の調査と、湘南藤沢中等部・高等部の脇田愛二郎 《HELIX-924K》の2点の調査洗浄保存処置を新規に実施した。

保存観察記録
2022年5月5日
＊作業期間　2021年11月5日～ 2022年3月11日
＊記録者　ブロンズスタジオ・黒川弘毅
＊作業者　黒川弘毅、伊藤一洋、篠崎未来、髙嶋直人、 高木謙造、宮本颯

 

矢上キャンパス屋外彫刻洗浄保存処置
＊調査・作業期日 2022年3月2日

●作品

作者＝山名常人

作品＝福澤諭吉胸像

材質・技法＝ブロンズ

制作年＝ 1985 年

寸法＝高さ120.0cm

●作業前の状態
＊表面の状態
オリジナル塗料の喪失が進行してさびの色が優勢になりつつある。垂直面と下向き斜面には褐色の塗料が残留し、凹部には濃緑色の塗料が残留している。塗料が残る潤色部分と乾色のコントラストは弱まる傾向がみられる。さびの色調には緑色への変化が認められ、安定したさびの形成がみられる。

＊鳥の排泄物 なし。
＊人為的キズ・落書きの個所 なし。
＊ピンホール（鬆）・穴・亀裂など なし。
＊内部からの噴出・析出物 なし。
＊破損・欠失個所 なし。
＊その他の異常 なし。
＊変形個所 なし。
＊固定状態 良好。

●作業の基本方針
保護剤は塗布せず、塗料の劣化を放置して自然の発錆を促す。

●作業内容
１．塗料除去テスト、洗浄作業
　　 溶剤（アセトン）で塗料の除去をテストして撥水性を観察した後、高圧洗浄機を用いて洗浄した。

●作業結果
塗料は除去されず、残留個所には撥水性が顕著に認められた。

●保存上の留意事項
2010 年12 月にワックスを施したがその後保守は行われず、自然のさびの色調が優勢となった。2020 年に残留しているワックスを除去し、自然のさびの色調を尊重する方針に転換した。


写真は左から
図1　 《福澤諭吉胸像》溶剤による塗料除去テスト後の撥水性
図2　 発錆状態　顕微鏡

日付

2022年2月25日

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