慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

パピエプリエ04:瀧口修造と影どもあるいは影像人間

イメージのメカニズムは、物質を浸透し、生命をのぞき、宇宙を探険する。
──瀧口修造「影像人間の言葉」『美術手帖』1962年4月増刊、美術出版社、1962年、2–4頁。


 詩人・美術評論家の瀧口修造は、1959年頃から「ジャーナリスティックな評論を書くことに障害を覚えはじめ」、1960年には「デッサンの動機を文章の動機と微かながらも接するところに見出そうとして」、絵を描きつつ、通称「手づくり本」と呼ばれる本を制作し始めていた。それは出版社や印刷所のプロセスを経ていない、瀧口自身の手仕事による本であり、ドローイング、雑誌の切り抜き、印刷物のコピー、銀紙、ラベル・シール、手書きのメモ等、いわゆる断片の寄せ集めによって構成され、完成にも、未完成にも見える本である。

 瀧口の絵や「手づくり本」に用いられる吸取紙とデカルコマニー(転写)などは、何かを写し取り、その痕跡を残すという点で共通している。それらは、いわば実体から派生した「影」だと捉えられる。

 翻って瀧口は「影像人間の言葉」(1962年)において「影像」という言葉を用い、また「白紙の周辺」(1963年)においては自らの書斎を「影どもの住む部屋」と呼んでいる。イメージを意味する「影像」と、書斎に住まう「影ども」。この二つの「影」は、瀧口の制作と思考においてどのような位置を占めているのだろうか。本シンポジウムでは、瀧口による絵や「手づくり本」、テクストを通して、瀧口修造における「影像」=「イメージ」の意味を問い直すとともに、制作とプロセス、さらには書斎という空間とそこに集積された断片との関係について考察する。
 

*パピエプリエ:〈パピエプリエ[papier plié]〉とは、瀧口が「手づくり本」に準ずるものに付けた名称である。直訳すると「折り畳まれた紙」だが、折紙を指す場合もある。『シュルレアリスム簡約辞典』(1938)の「美しい死骸」の項目に、次のような説明がある。「いく人かの人間に、一句乃至はひとつのデッサンをかかせることでなりたつ、パピエプリエの遊び。」(アンドレ・ブルトン、ポール・エリュアール編『シュルレアリスム簡約辞典』江原順訳、現代思潮社、1976年、6頁[初版1971年]。原文を参照しつつ一部訳語を変更した。)。遊びの最中、前の人が書いた/描いたものは折り畳まれて隠され、次の人は見ることができない。
**シンポジウムの内容は急遽変更になる場合があります。

 


瀧口修造コレクション(慶應義塾大学アート・センター所管)
詩人、美術批評家である瀧口修造(1903‒1979)の1936‒1979年にわたる資料体。瀧口は、1920年代より実験的詩作を開始し、1950年代は美術評論を行うとともに展覧会を企画した。1960年代は評論から徐々に撤退し、制作を行うようになった。戦後の美術史が形成される上で中心的役割を果たした人物である。
2001年、瀧口のご遺族鈴木陽氏からの資料寄贈を機に開設。中心となる資料は、書簡、写真、催事印刷物、草稿、手づくり本(通称)およびその材料、書籍等(書簡:3,538件、草稿:13箱、手帖:87件、雑資料:279件、写真:623件、手づくり本およびその材料:11箱、書籍:773件、催事印刷物:1,323件 )、総計:6,609件(単位が系列ごとに異なるが、全て1件と数えた)を所管。系列ごとに整理の深度が異なり、件数が明らかになっているもの以外(箱)の整理を進めて行きたいと考えている。
残された物品の中には、通常ならゴミとして廃棄されてしまうであろうものまで含まれており、非常に繊細な手つきによって、それらの様々な再配置を繰り返し試みていたことが書斎写真からも窺われる。戦後の芸術史を見直す上で、重要な資料体である。
2021年、実際の資料体から瀧口像を再構築するとともに、瀧口のアクチュアリティを現代へ接続するべく瀧口修造研究会を発足。パピエプリエはこの研究会の公開例会の側面を有する。
 

日時

2026年12月5日(土)13–16時

場所

慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-lab(キャンパスマップ⑬)

対象

どなたでもご参加いただけます。事前申込みは不要です。

費用

無料

お問い合わせ

慶應義塾大学アート・センター
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
TEL 03-5427-1621

日時

2026年12月5日(土)13–16時

場所

〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G-lab(キャンパスマップ⑬)
最寄駅:JR山手線・京浜東北線 田町駅、地下鉄三田線・浅草線 三田駅、大江戸線 赤羽橋駅

対象

どなたでもご参加いただけます。事前申込みは不要です。

費用

無料

登壇者/出演者

登壇者:秋元裕子、笠井裕之、カニエ・ナハ、久保仁志、桑田光平、島本英明、山腰亮介、山本浩貴(いぬのせなか座)

タイムテーブル

【開場】
12:40

【1部】
13:00–13:05|久保仁志(司会)
13:05–13:30|秋元裕子
13:30–13:45|島本英明
13:45–14:00|山腰亮介
14:00–14:15|久保仁志
14:15–14:30|議論

【休憩】
14:30–14:45

【2部】
14:45–15:00|八木宏昌:富山県美術館の展示室(「瀧口修造と分身あるいは影像」)を同時中継
15:00–16:00|秋元裕子、笠井裕之、カニエ・ナハ、久保仁志、桑田光平、島本英明、山腰亮介、山本浩貴[いぬのせなか座])

お問い合わせ

慶應義塾大学アート・センター
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
TEL 03-5427-1621

主催・共催など

主催:慶應義塾大学アート・センター
協力:富山県美術館