森芳雄 素描 修復
本作品は、2021年度にご遺族よりアート・センターへ寄贈された。森芳雄(1908-1997)は1921年に慶應義塾普通部に入学。当時普通部は三田の綱町に校舎があり、森は同校舎で1921年から26年まで学んだ。在学中に白瀧幾之助にデッサンを学び、普通部卒業後は本郷絵画研究所に通う。1931年から34年にフランスに滞在し、サロン・ドートンヌに入選。1950年からは武蔵野美術大学で教鞭をとり、後進の指導にあたった。本作品は1950年代初頭に森が三田キャンパスを訪れて描いたものである。作品の受入の際、一部にしみや古いテープの接着等がみられたため、修復家に状態確認を依頼し、全60点のうち、処置が必要と判断された素描37点の修復を依頼した。
ここでは修復を行なった37点のうち、No.2を取り上げて詳細を記す。修復を行なった作品は以下のリストを参照のこと。
森芳雄 素描 修復処置作品リスト
※本リスト記載のうち、裏門は現・西門、図書館は現・図書館旧館、正門は現・東門である
| 作品no | 内容注記 | 制作年 | 技法・材質 |
| 1 | 第三校舎(四号館)付近カ | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 2 | 裏門付近カ | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 3 | 裏門 | 1950-52年 | 鉛筆・紙 |
| 4 | 塾監局カ | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 5 | 演説館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 6 | 演説館、第二研究室、大講堂カ | 1951-57年 | 鉛筆・紙 |
| 7 | 図書館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 8 | 図書館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 9 | 図書館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 10 | 図書館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 11 | 綱坂 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 12 | 図書館 | 1950年代頃 | 鉛筆・紙 |
| 13 | 演説館(奥に第二研究室カ) | 1952年 | 鉛筆・紙 |
| 14 | 裏門から第三校舎(四号館)を見る | 1950-52年 | 鉛筆・紙 |
| 15 | 裏門坂道、第三校舎(四号館) | 鉛筆・紙 | |
| 16 | 裏門付近、第三校舎(四号館) | 鉛筆・紙 | |
| 17 | 演説館 | 鉛筆・紙 | |
| 18 | 演説館 | 鉛筆・紙 | |
| 19 | 演説館(画面両面) | 鉛筆・紙 | |
| 20 | 演説館 | 鉛筆・紙 | |
| 21 | 塾監局カ(表)演説館付近(裏) | 鉛筆・紙 | |
| 22 | 演説館(表)木立(裏) | 鉛筆・紙 | |
| 23 | 図書館 | 鉛筆・紙 | |
| 24 | 図書館 | 鉛筆・紙 | |
| 25 | 正門へ向かう坂付近カ | 鉛筆・紙 | |
| 26 | 図書館・五号館前広場カ | 鉛筆・紙 | |
| 27 | 図書館・五号館前広場カ | 鉛筆・紙 | |
| 28 | ベンチ | 鉛筆・紙 | |
| 29 | 広場(表)不明(裏) | 鉛筆・紙 | |
| 30 | 左:塾監局 右:五号館カ | 鉛筆・紙 | |
| 31 | 第一校舎、大イチョウ、学生ホールカ | 鉛筆・紙 | |
| 32 | 第二研究室 | 1951年以降 | 鉛筆・紙 |
| 33 | 第一研究室、図書館、第一校舎 | 鉛筆・紙 | |
| 34 | 坂道 | 鉛筆・紙 | |
| 35 | 演説館、第二研究室、大講堂カ | 1952年以前 | 鉛筆・紙 |
| 36 | 第三校舎(四号館)付近カ | 鉛筆・紙 | |
| 37 | 道 | 鉛筆・紙 |
●作品
作者: 森芳雄
作品名:[裏門付近ヵ]
制作年: 1950年代頃
材質:鉛筆、洋紙
寸法:25.1×17.7cm
修復記録
2024 年3月30 日
有限会社 修復研究所二十一
担当 有村麻里 池上久美
[作品の状態]
支持体周縁に折れや皺が目立ち、周囲に変形が生じている。紙の収縮や取り扱いによる細かな皺が全体に見られる。上辺、左辺に数カ所破れがある。支持体全体に黄化が進行し、四辺が特に黄変している。裏面に汚れ、付着物、斑状の褐色のしみが見られる。上辺中央、右辺中央に紙テープが貼付されている
[修復行程]
1 写真撮影
2 状態調査
3 修復計画の立案
4 乾式洗浄
5 しみぬき
6 変形修正
7 破損部接着
8 旧処置除去
描画がある部分は周縁に見られる制作中の描き替えの痕跡は残すように注意して汚れを練り消しゴム等で除去した。紙テープは僅かに湿りを与え、接着剤を緩ませて除去した。斑状のしみは使用する溶液が周囲に拡がらないよう、細筆で一点一点のしみに溶液を注して行った。支持体全体を僅かに加湿した後、ポリエステル紙・吸い取り紙・アクリル板で挟み、おもしを置いて自然乾燥させた。
[しみ抜きで使用した溶剤]
斑状のしみ:過酸化水素水溶液・希アンモニア水溶液
[破損部接着]
材料:和紙
接着剤:メチルセルロース

1. 修復中 乾式洗浄 表
やわらかな刷毛で表面に付着した埃等を除去した。

2. 修復中 乾式洗浄 表 図2
鉛筆の線や意図的に擦ったぼかし部分やその周辺などは避け、練り消しゴムで汚れを除去した。

3. 修復中 乾式洗浄 裏 図3
裏面の描画がない部分は粉消しゴムと刷毛を用い、全体を清掃した。

4. 修復中 付着物除去 図4
画面側、裏面側に付着している物質は周囲にしみを生じているものが多く見られ、医療用メスで除去した。

5. 修復中 しみぬき 画面 図5
しみ一点一点に対し、細筆で溶剤を注し、しみぬきを行った。

6. 修復中 湿式洗浄 図6
水分を含むことで支持体に急激な収縮が生じないよう、作品は予め時間をかけて加湿し、僅かに湿りを与えた。その後、サクションテーブル上に置き、精製水を噴霧した。

7. 修復中 湿式洗浄 図7
作品の下に敷いた吸い取り紙に洗浄の際に水分に溶解した汚れが吸着している。

修復前 表

修復後 表
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