慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

中西夏之《中西夏之の背面(「男子総カタログ ʼ63」より)》修復

戦後の前衛芸術グループ「ハイレッド・センター」を高松次郎、赤瀬川原平とともに結成した中西夏之による作品。本作品はハイレッド・センターの「シェルター計画」で撮影された男性の背面写真を、中西が等身大のブループリントにしたものである。本作品には紙の亀裂などが見られたため、修復研究所二十一に修復を依頼した。このブループリントの長尺の作品≪男子総カタログ ʼ63≫は2013年に修復が行われている。



●作品
作者: 中西夏之
作品名: 中西夏之の背面(「男子総カタログ ʼ63」より)
制作年:1963年
材質・技法:青写真感光紙
寸法:168.0 cm×66.3 cm

修復記録
2025 年3月31 日
有限会社 修復研究所二十一
担当 有村麻里

[作品の状態]
現在は丸筒に巻いて保存されているが、支持体全体に見られる横方向の変形の状態から、以前は芯材なしで巻かれ、展示に伴う移動や取り扱い時に掛かる荷直、支持体の劣化によるたわみなど、複合的な要因が加わり、折れやしわ、巻き癖が強くのこった可能性がある。画面、裏面共に汚れが付着している。裏面の下辺周縁部は、黄化、汚れが特に目立つ。長期間、外気や光に晒されていたことが窺われる。左右辺に2mm~20mm程の破れが数ヶ所にあり、裏面側に紙テープによる補強が施されているが、接着力が失われて外れている。左上角に10 cm強ほどの破れがあり、和紙で補強されているが、破れ口のずれの他、接着剤の濃度、水分量の影響によって、周縁に波打ち変形が生じている。本紙は展示を考慮したロールスクリーン型の仕様で、上下辺に展示用のアクリル板が取り付けられている。本紙との接続部分周縁も同様に波打変形やしわが生じている。人物頭部の上方に、裏面側に貼付されたセロハンテープが劣化し、黄変した接着剤が画面側まで及んだ暗い茶系のしみ痕があり、目立っている。上下片に取り付けられたアクリル板を覆う和紙の両端に破れが生じている。全体的に画面の色調は、経年による色褪せが見受けられる。

 

[修復行程]
1 写真撮影
2 状態調査
3 修復計画の立案
4 乾式洗浄
5 旧処置除去
6 破損部接着
7 しみぬき
8 展示用アクリル板(ヘッドバー・ボトムバー)取り付け
9 写真撮影・報告書作成

※巻いた状態で保管する際、底面に接触する部分に支持体の重みが集中するため、左右辺に箭を支える受け付きの保管箱に納めると、より本紙への負担が緩和される。また、展示のために取り付けられたアクリル製の板が取り外せるような仕様であると、支持 体の変形などの懸念も軽減されると考える。

 


図1 修復前 表


図2 修復中 しみぬき接着剤浸透部分


図3  修復後

Date

2025年3月31日


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