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慶應義塾大学三田キャンパスは第二次世界大戦により大きな被害をうけたが、1947年の義塾創立90年を契機に復興にむけて歩みだした。戦後の混乱が続くなか、キャンパスの復興計画を委託された建築家谷口吉郎(1904−1979)は、三田山上という場所(=ロクス)のもつ意味に思いをはせると同時に、新しい時代に歩みだそうとする溌剌とした時間の弾みを建築空間に具体化しようとしていた。まさにその時、この構想を実現に導く人物がたまたま1950年初夏、アメリカから来日する。彫刻家イサム・ノグチ(1904−1988)である。
キャンパス西南端に建設された「第二研究室」と1階南側部分の談話室「新萬來舎」は、時代の新しいコミュニケーションを空間化しようとする建築家谷口吉郎と、芸術ジャンルや文化圏を自由に横断する彫刻家イサム・ノグチによる戦後最初のコラボレーションの成果である。20世紀の世界の美術史にてらしてみても、モダニズムのアート・シーンで特筆に値する出来事といわざるをえない。
新萬來舎を中心に、谷口とノグチのコラボレーションについて具体的な作例をあげながら紹介していく。