【FromHome】-13 6月19日:「コロナ禍の生活で感じたこと」永渕圭子(2020/6/17)
Fromhome
慶應義塾大学アート・センターは、展覧会活動やアーカイヴの公開を行ってきました。キャンパスに隣接しながら門の外にあるという場所も含め、小さいながらも外に向かって開かれている学校の小窓的存在と言えます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響下、展覧会やアーカイヴの公開を出来ない状況が続いていますが、スタッフはリモートで仕事を続け、アート・センターは活動しています。その中で、現状下における芸術や研究、自分たちの活動や生活について様々に考えを巡らせています。
そこで、所長・副所長をはじめスタッフからの日付入りのテキストを現在時点の記録として、ここにお届けいたします。
慶應義塾大学アートセンター
コロナ禍の生活で感じたこと
永渕圭子(アーカイヴ・スタッフ)
コロナ第一波が収束し世の中は大分落ち着きを取り戻しているが、一時は張り詰めた空気の中で過ごしていた。私の家族は、最近まで海外で暮らしていたため、欧米で急速に状況が悪化した頃は不安を募らせた。非常時にはできることも限られるし、海の向こうのことなど祈ることしかできない。結局自分の身は自分で守るしかないと実感している。
次女は、水際対策強化により日本人帰国者に対するPCR検査が始まった4月3日、米国から帰国し、とりあえず私は胸を撫で下ろした。空港で受けた検査結果は後日連絡するとのことで、帰宅してそのまま二週間の自宅待機となった。大学は3月中旬からオンライン授業に切り替わっていて、どこにいても支障はない。ただ授業も期末試験も時差の関係で夜間になる。もう一人は、メキシコシティーに単身赴任中だった夫のことで、3月下旬から在宅勤務をしていたのだが、5月末帰国、PCR検査陰性、二週間のホテル待機を経て帰宅した。日本ではあまりニュースにならないようだが、6月に入るとメキシコでは新型コロナウィルス(COVID-19)による新たな死者が1000人を超える日もあるほど感染爆発が起こっている。因みに現在アメリカ、ブラジル、インド、ロシアなどの国では夥しい数の新規感染者が出ているらしい。夫も次女も、現地では部屋に籠りきり、食料の買い出しは慎重に出かけていた。商品のパッケージや買い物袋も拭き取るなど徹底したそうだ。米国のスーパーでは入場が制限され、2メートルの間隔を開けて並んで待つとのこと。二人とも空港の検査で陽性となるとは余り考えられなかった。PCR検査は強い痛みを伴うようで、空港で検査を受けた際、夫の後ろに並んでいたお子さんは大泣きしていたとか。帰国者の中で感染が見られたのは3月までではなかっただろうか。検査は受けなければならないが、二週間の待機期間はそのまま自宅に帰れない場合、大変だろうし、もし自宅待機中に感染が分かったとしたら、濃厚接触者になる。色々と矛盾を感じることが多い。ただ、このような状況でも海外から帰国便があることに安堵した。
私は慶應アート・センターのアーカイヴで2018年5月から整理作業を担うスタッフとしてアルバイトをしている。4月からアーカイヴは臨時閉室となり、私は週一度、オンラインで行われるグループミーティングに参加し、要件毎に個別の確認をとりながら在宅勤務を続けている。アルバイトであるが職場とつながっていられることは有難いと思う。ただ、オンラインミーティングでは、聞く方は良いのだが、誰もいない部屋で話すことに慣れない。わずかな時差や、お互いの自然な反応や表情なども分かりにくいところで不安になる。また、いくつかのツールを使って説明を聞くことはできても、使うことができない。オンラインでの仕事やミーティングでは、対面時以上に、よく内容を理解していることが大切で、学ぶことも多いと思う。IT技術の革新、特にオンライン化で可能になる在宅勤務は、通勤による時間的、体力的な負担がなく、都合の良い場所からパソコンに向かうこともできるなど、メリットの大きい働き方である。娘も何やら就職活動などしているようだ。コロナ禍でやむを得ずではあるが、今の生活はIT技術によって成り立っている部分が大きいし、これから、もっと社会に浸透していくだろう。ついていけるだろうか。
実は、コロナ禍の生活の中で、オンラインでの買い物が一つの息抜きになった。宅配業者の方達には悪いと思いながら、ペット用品や本をはじめ、パンや菓子材料など時々購入し、娘たちと3人で手早く黙々と菓子を作った。消費すること、何かを作ることはとても楽しい。一時、小麦粉やバターなど入手困難になる程だったが、皆、同じような発想でコロナ禍の生活をやり過ごしていたのだろうと思う。
もう一つの良い息抜きは、外出だった。スーパーへの買い出しはできるだけ短時間で済ますようにしたが、自転車に乗り新鮮な外の空気を吸うのは気持ち良い。日本は法的な理由で外出制限が出せないそうだが、生活に必要な物資もほぼ手に入り、自由に外出できる状況だったのだから、その点良かったのかもしれない。外に出ると、買い物やジョギングの人、学校が休校だから子供達も多く、普段以上の人出に驚いた。犬の散歩コースの公園ではよく犬連れの人と軽い会話をした。お互いにマスクを通して遠慮がちに、でも、人と話すことで何だかホッとできた。もしこのような外出自粛が続き、一人暮らしでIT化にも取り残された高齢者だったらと、ふと母のことなどを思った。
2020年6月17日
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