慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

峯孝《牧童》志木高野外彫刻洗浄保存処置・修復

  志木高等学校に設置されている3点の野外彫刻のうち《松永安左エ門胸像》は、2009年度に着色補整・保存処置・作品固定を行い、峯孝《牧童》、大熊氏廣《福澤諭吉像》は、2008年度に修復および、着色補整・保存処置を施した。 今年度は、アート・センターを通じて専門家により、《松永安左エ門胸像》の状態観察と洗浄を行い、峯孝《牧童》については、状態観察と洗浄に加えて、脱落した銘板を固定した。大熊氏廣《福澤諭吉像》は、清掃と予備調査を実施した。本件はそのうちの1点である。



保存修復作業記録

2016年5月10日 ブロンズスタジオ・黒川弘毅/作業者:黒川弘毅、篠崎未来、遠藤啓祐(有)石歩・大野春夫(銘板設置)

作品

作者=峯孝
作品名=牧童
材質・技法=ブロンズ
獣医畜産専門学校卒業生寄贈


【作業前の状態・表面の状態】

・表面の状態:ワックスの喪失部分に淡青色の斑紋が生じ、撥水性の減退・喪失がみられた。淡青色さびには緑色へ
・破損・欠失個所:なし。
・変形個所:なし。
・その他の異常:「創立125周年記念」銘板は、裏打ちの木製合板が腐り台石から脱落していた。
・固定状態:上記銘板を除き良好

[銘板固定作業]
「創立125周年記念」銘板は、裏打ちの木製合板が腐り台石から脱落していた。
銘板は真鍮製で、エッチングによる凸文字を含む肉厚は1.7mmであった。銘板には下部に変形が見られた。裏打ちの木製合板は12mmと推定される。石への固定は鉄製アンカーボルト4本  とエポキシ樹脂が使用されていた。


【作業の基本方針】

保護剤のワックスを加熱塗布して着色を調整し、撥水性を維持する。


【作業内容】 

1.洗浄作業 非イオン系洗剤を用いて洗浄した。
2.保護剤塗布作業蜜蝋を全体に加熱塗布し、色調を調整した後、輪郭にメリハリが出るように光沢を調整した。
 使用材料 蜜蝋、リグロイン

【作業結果】 

ワックス喪失箇所の斑紋が目立たなくなり、穏やかな光沢と良好な撥水性が復元した

[銘板固定作業]
【作業の基本方針】

ステンレス製固定金具を作成し、これに銘板をネジ留めにより装着して台石に固定する。 銘板には伸びの塑性変形が生じている。文字を損なう恐れがあるため、変形箇所の矯正は行わない。

【作業内容】

1.ステンレス製固定金具作成薄い真鍮版の変形を防止するバックアップ板材と平板剤の枠、アンカーボルト4本を設けた固定金具を作成する。材料はステンレス(SUS304)を使用する。
2.銘板固定作業銘板が設置される台石の凹みの底面と側面を、固定金具合わせて切削し調整した。新たなアンカー穴を穿孔して、銘板を装着した固定金具をエポキシ樹脂で台石に固定した。

【作業結果】

銘板は台石に堅牢に固定された。

写真は左から
写真1:作業前
写真2:鳥の排泄物付着
写真3:銘板 表面修理前
写真4:洗浄
写真5:作業後
写真6:銘板 修理前
写真7:銘板 修理後
写真8:固定金具装着後の銘板
写真9:作業後

日付

2016年1月28日(板固定は2016年1月28日~2月27日)


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