慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

1970年代以降のパフォーマンスおよび展覧会のビデオ記録のデジタル化・レコード化

本事業は、戦後から現代にいたる日本のメディア芸術の諸活動を、「インターメディア」という枠組みにおいてとらえ直し、芸術史・映像史という縦軸と、同時代の様々な芸術諸活動という横軸との交差点に位置するビデオアート関連資料群が包含するパフォーマンスおよび展覧会記録に着目し、それらのデジタル化・レコード化を通じ、日本のメディア芸術史をよりよく精査可能にするための基盤構築を目指す。

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    久保仁志

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● 令和5年度 メディア芸術アーカイブ推進支援事業 メディアアート分野「1970年代以降のパフォーマンスおよび展覧会のビデオ記録のデジタル化・レコード化」について

 本事業は、戦後から現代にいたる日本のメディア芸術の諸活動を、「インターメディア」という枠組みにおいてとらえ直し、芸術史・映像史という縦軸と、同時代の様々な芸術諸活動という横軸との交差点に位置するビデオアート関連資料群が包含するパフォーマンスおよび展覧会記録に着目し、それらのデジタル化・レコード化を通じ、日本のメディア芸術史をよりよく精査可能にするための基盤構築を目指す。
 戦後、〈綜合文化協会〉〈世紀の会〉〈夜の会〉や〈実験工房〉等を経て、草月アートセンター、そして「クロス・トーク/インターメディア」や「70年大阪万博」にいたるまで「芸術の総合」が重要な問題の一つとされ、様々な形で展開されてきた。これらを端的には「インターメディア」問題とまとめることができる。それは固有の芸術領域の閉塞状態を突破したり、そのさらなる展開を模索するために異なる芸術領域をいかに相互に関連づけ触発しあうのかについての方法論の探求と、新たなテクノロジーへの批判的な吟味だと言い換えられる。しかし、およそ1970年代以降も「インターメディア」問題は重要であり続け、様々な形で展開されながらも、1997年にICC(NTTインターコミュニケーション・センター)が設立され「インターコミュニケーション」という領域横断的なテーマが登場するまで、直接的に焦点化されることがなかったと言えるだろう。この探求の主戦場の一つとなったのはダンスや演劇や美術や音楽におけるパフォーマンス(以下諸領域にまたがりパフォーマンスと総称する)、そして展覧会である。これら1970年代以降の「インターメディア」の状況を踏まえ、その歴史化を行うための資料体構築を目指す。
 具体的には慶應義塾大学アート・センター(以下KUAC)が所管している「中嶋興」(1941—)関連資料と「VIC」(Video Information Center, 1972—)関連資料の中からパフォーマンスと展覧会の記録に着目し、ビデオテープと写真のデジタル化・レコード化・リスト化を行うことによって、およそ1970年代以降どのように「インターメディア」問題が模索されていたのかについて明らかにすることを目指す。
 現在までの資料体構築の過程で、中嶋興とVICの資料体の中には多くのパフォーマンス/展覧会記録があり、両者の活動は日本に留まらず世界的にも重要だと認知され、国際的な関心を集めていることが分かっている。しかし、両者の資料体の中に含まれる写真やビデオテープの中にはカビの発生、ビネガーシンドローム化やバインダー化が進んでいる資料が多くあり、早急のデジタル化を行う必要に迫られている。もし、数年以内にこれらのデジタル化を行わなければ、1970年代以降のパフォーマンスおよび展覧会の重要な記録の一部が消失してしまう可能性があるため、ビデオテープに適切な処置を施すとともに、デジタル・データ化を行い、レコード化することが喫緊の課題であり、本事業においてこれらの解決を試みる。
 また、中嶋興《MY LIFE》の最新版制作とそれに伴う勉強会を通じてこれら資料体=アーカイブを現代的な制作と接続し、1970年代以降の「インターメディア」問題についての研究を行う。さらに、昨年度事業において行った「マイ・ライフ勉強会II」(2024年1月31日|KUAC)のように、当室が大学内の研究所でもあることを活かし、VICと中嶋興の資料体を大学教育においても活用することを試みる。